「大黒書・第零版alpha00」を公開しました

弊会は本日、「大黒書」(だいこくしょ、The Book of Daikoku)という経典を公開いたしました。この経典は、「大黒教」(だいこっきょう、Daikokism)という、可能世界論をベースとする宗教を記述したものです。

無数に存在する可能世界のうちの一つを現実世界にするものは何であるか、というのは可能世界論におけるアポリアの一つです。大黒教は、このアポリアに対する宗教的な解答として、すべての可能世界の集合の中から一つを選択し、それに現実性を与える存在者を措定し、「大黒」(Daikoku)という名前をそれに与えます。

大黒は、アブラハム宗教におけるYHWHとよく似た唯一神です。したがって、大黒教は唯一神教(monotheism)の一つということになります。しかし、YHWHと大黒との間には大きな相違点があります。YHWHが単一の意志を持つ神であるのに対して、大黒は単一の意志を持たない神です。なぜなら、大黒というのはすべての神を要素とする集合だからです。すなわち、大黒教というのは、唯一神教であると同時に多神教でもあるのです。

大黒教においては、「神」(god)という言葉は、「自由意志を持つ存在者、または神を要素とする集合」というように再帰的に定義されます。「自由意志を持つ」ということは、「自身に与えられた可能世界の部分集合の中から一つの世界を選び出し、それに対して現実性を付与する能力を持つ」ということと同義です。この定義には、多神教において崇拝の対象とされる神々のみならず、人間を始めとする多くの種類の動物も当てはまります。してがって、大黒教においては、人間や猫や熊や鹿も「神」と呼ばれることになります。

「大黒書」は、大黒教の正典となる経典です。ただし、この経典は、現在はまだアルファ版です。今後も改良を進めて参る所存ですので、ぜひ皆様よりご意見を賜りたいと思っております。またご意見のみならず、誤字脱字につきましても、お気づきの方がいらっしゃいましたらご指摘くださいますようお願い申し上げます。

なお、「大黒書」は、大黒教の本質のみを簡潔かつ正確に記述するという方針に基づいて書かれております。したがって、「分かりやすさ」というものはそれほど考慮されておらず、今後も、分かりやすさを向上させるために説明を冗長化するという方向で改良されることはないでしょう。「分かりやすさ」は、「大黒書」においてではなく、将来的に書かれるであろう大黒教の入門書(タイトルは「大黒学大全」になる予定です)において追求されることになるであろうと思われます。