一神教学会は設立十周年を迎えました

弊会を見守ってくださっている皆様へ

2006年5月22日に設立された弊会は、本日、めでたく十周年の佳節を迎えました。弊会がこれまで活動を続けることができましたのは、弊会を生温かく見守ってくださっているすべての皆様のおかげです。ここに、改めまして皆様に厚く御礼申し上げます。

弊会の活動の「成果」について

弊会は、これまで十年にわたって活動を続けてきたわけですが、これまでのところ、「成果」と呼べるようなものは、まったく得られておりません。しかし、これは悲嘆すべきことではありません。なぜなら、弊会が「成果」と考えるものは、あまりにも壮大なものであり、それが得られるようになるまでには、何十年、あるいは何百年という時間が必要となるかもしれないからです。したがいまして、弊会の活動を農業にたとえるならば、現在はまだ作物の種を蒔いている段階に過ぎません。場合によっては、現在の会員は種を蒔くだけで寿命を迎え、「成果」を収穫するのは何世代も先の会員となるかもしれません。

弊会が「成果」と考えるものは、人類全体を巻き込む宗教上の革命です。この革命が起きたのちの人類は、「すべての宗教はフィクションである」という命題を常識として共有することになるでしょう。しかし、この革命は、宗教というものを駆逐するわけではありません。この革命ののちも、人類は、新しい宗教を作ったり、それを布教したり、何かに祈りを捧げたり、という活動を続けるでしょう。しかし、宗教が紛争の原因となったり、宗教が反社会的な活動のために利用されたりする、ということはなくなるでしょう。

弊会が起こそうとしている革命は、香川雅信さんが「妖怪革命」と呼ぶ、日本の江戸時代に起きた妖怪をめぐる革命に似ています*1。「妖怪革命」が起きる以前の時代においては、妖怪というのは実在する存在者であると考えられていました。しかし、革命後、妖怪に対する日本人の認識は一変しました。「すべての妖怪はフィクションである」という命題が常識となったのです。しかし、この革命は決して妖怪を駆逐したわけではありません。現在もなお妖怪が日本の文化における不可欠な要素の一つであり続けていることは、皆様もご存知のとおりです。

設立十周年記念事業について

昨年の12月22日のエントリーでお知らせしましたように、弊会は現在、設立十周年を記念する事業といたしまして、「多一教」(polynitism)と称する宗教の布教を計画いたしております。この宗教は、「どのアブラハム宗教も帰依の対象とする神は同一であるにもかかわらず、複数のアブラハム宗教が存在するのはなぜなのか」という問題に対する解答を持つ、アブラハム宗教に属する新しい宗教です*2

現在、弊会会長は、「多一教の教理問答」と題する多一教の経典を開発する作業を進めております。近日中にはその経典のアルファテストを開始する予定でございますので、その節は、皆様の忌憚のないご意見をお聞かせいただけますとありがたく存じます。

*1:香川雅信、『江戸の妖怪革命』、河出書房新社、2005。

*2:昨年の12月22日のエントリーの中で、弊会は、「おそらく多一教は、「第四アブラハム宗教」(the fourth Abrahamic religion)という別名で語られることになるでしょう」と述べましたが、これまでに作られたアブラハム宗教としては、ユダヤ教キリスト教イスラームバハーイー教など、三つ以上のものがありますので、この発言は撤回させていただきたいと思います。